TYT-073 - 声
管理番号: TYT-073
妖異通称: 地下道の声
危険レベル: レベル2
遭遇した場合は直ちに退避行動を取ります。物品や事象の場合、近づくことも避けるべきです。
警戒すべき対象です。なるべく早い段階でその場から退避する行動を取るべきです。
対応状況: 地元警察と連携し、被害状況を確認中。
外観
関連事件
● 夜間に通るとどこからともなく、呼び掛けて来る“声”が聞こえてくるとの報告が多数。
“声”そのものの発生源は不明。
性別等も報告者によって異なるが、くぐもった感じの声という点と“こっちから行くよ”と呼び掛けて来る点は共通しています。
広域情報
● 関東都市部の繁華街にある地下道。
報告されているのは夜間に限る。
ポイント
■ある男性の体験談(※プライバシー保護のため、名前は仮名にしてあります)
何ヵ月か前だったな…友達の信二(仮名)と飲みに行った帰りだった。
そこは繁華街の中の地下道でさ。横断歩道の信号待ちしなくて良い便利なとこなんだけど、夜は少し怖いんだ。人通り無くてさ、たまに浮浪者とかいるし。女の子はまず通らないね。
まあ俺もそいつも男だから、長い信号待ちなんてしたくねぇって思って地下道通って駅まで行こうとしたわけよ。
階段降りて地下道に入ると、30mくらいかなぁ…そんくらいの通路になってて、白い蛍光灯が等間隔に付けられてて。
別に明かりが足りないわけじゃないのに、なんか暗く感じるのは、人気の無さと薄汚れた汚い壁のせいだと思う。
俺も信二も酒が入ってほろ酔いでさ、下らない話しながら歩いてたんだ。
辺りには誰もいない。繁華街の喧騒が嘘のように静かだった。
二人の足音だけが、カツ…カツ…カツ…って響いてて、二人して「なんか怖ぇな」なんて笑いあってた。
ところが、地下道の真ん中辺りに来た時、急に信二が黙りこくったんだ。
酔いが回って気持ち悪くなったか?と思って、歩く速度を落として顔を覗き込んだ。
血の気が引いたように、真っ青になってた…
これマジで吐くんじゃないかと思って、立ち止まって聞いたんだ。
「おいおい、お前、大丈夫か?」って。
そしたら信二はチラッと俺を見て…
「止まるな、駄目だ…行こう。さっさと地上に出よう…」
と囁くように言った。
気持ち悪いとかじゃなくても、なんか様子がおかしい。問い質そうとしたら、信二はガタガタ震え出した。
「お前、聞こえないのか…?」
独り言のように吐き出した問い掛け…俺は言葉を飲み込んだ。
ごぉ…ごぉ…と、地上を走る車の音が妙に大きく聞こえてくる。
それに混じるように、何かが聞こえてきた。
こっち……こっちだよ……おぉーい、おぉーい……
男とも女とも、大人とも子供とも判別し難い…くぐもった“声”が聞こえてきた。
辺りを見渡しても、誰もいやしない。
その“声”が、上から聞こえて来るのか、下から聞こえて来るのか…どこから聞こえて来るのかも分からない。
とにかく耳の中に入って響いている。
信二を見ると、何かを訴えるように頷いている。
どうやらこの“声”は、酔いのせいで聞こえてくる幻聴では無いらしいことは確かだった。
おぉーい…おぉーい…、来ないなら……そっちに行くよぅ……
それは、はっきりと聞こえてきた。
不味い…これは不味い。ここを出なくては!
俺と信二は、何も言わずに駆け出した。
学生時代以来の全力疾走だ。その時間は数十秒…いや、数秒だっただろう。なのにとてつもなく長く感じた。酔いなんてとっくに醒めて、ただただ駆けること…この地下道をいかに早く抜け出すかだけを考えていた。
一段抜かしで階段を駆け上がり、目映いネオンに彩られた地上に出た時には、肺や腹が痛むほど呼吸を乱していた。
地上に出てからは、あの“声”聞こえなくなっていた…。
あれ以来、もう俺も信二も地下道を通らなくなったね。正直地下鉄も苦手だ。
あの声の主が誰だったかなんて、考えたくもないね。
いや、誰というより…“何だったか”が正しいかな。
人だったのか、幽霊だったのか、それとは違うものだったのか…
好奇心が疼く?やめとけ、やめとけ。
あっちの世界に連れてかれちまうぞ?
対応詳細
暴行、事件等の被害報告が無いため、過去の事例と照合しながら調査を進めています。
また、近隣にある地下道でも同様の被害報告が無いか調査中。
報告が上がっているのは関東都市部の繁華街ですが、他の地域で似たような都市伝説が過去に流行したことがあるため、その都市伝説の詳細を専門家と共に調査しています。
懸賞金
被害報告による謝礼などは今後の進展状況に応じて検討。
CREDIT
© 2019 浅倉喜織
License: CC BY 4.0
画像はhttp://seiga.nicovideo.jp/seiga/im8039952より引用。