TYT-072 - メトロの死闘
管理番号: TYT-072
妖異通称: 壁の魔物
危険レベル: レベル2
遭遇した場合は直ちに退避行動を取ります。物品や事象の場合、近づくことも避けるべきです。
警戒すべき対象です。なるべく早い段階でその場から退避する行動を取るべきです。
対応状況: 調査中。
外観
関連事件
● 2018年都内メトロの某駅にて、会社員Aさんが、壁から出てきた化け物に首を絞められるという事件が発生。
目撃者の男子高校生によると、ホームと改札を繋ぐ階段の壁から、人間の上半身のような化け物が出てきて唸り声を上げながらAさんの首を掴んで持ち上げていたとのこと。
「映画に出てくる液体金属みたいで、壁と繋がっていた」と証言しています。
広域情報
● 都内地下鉄の人気の無い駅。
被害報告があったのは平日の午後。
他の駅でも被害が無い調査中。
ポイント
● 被害者Aさんが週刊誌記者に語ったインタビューより引用。
その日はとても暑くて、外を歩くのが辛くて地下鉄を使ったんです。
私の仕事は外回りの営業。真夏の炎天下でもヒールを履いてスーツをビシッと着て、一日中歩き回る…やってられませんよ。熱中症になるのが嫌で、少しの距離だったけど、地下鉄に乗りました。
東京の地下鉄はとても複雑ですが、慣れてしまうととても楽チンです。私が降りた駅は繁華街やオフィス街から離れた、下町に近い場所でした。客先が町工場でしたので、そういう場所に行くのは慣れてました。
降りる人?ほとんど居ませんよ。下町に近いだけあって、帰宅ラッシュや下校ラッシュなら降車客も多いでしょうけど、そういう時間じゃなかったので。
私以外だと、ベビーカーを押している若いママと、明らかに学校をサボって帰宅途中だと分かる高校生、買い物帰りの老夫婦くらいでした。
老朽化の進んだホームは、明かりが点いているのにどこか薄暗くて、降り立っただけで不安に駆られるような雰囲気でした。
ベビーカーのママと老夫婦は、真っ先にエレベーターの方に行きました。当然ですよね、エスカレーターはありませんので。
男子高校生は、ホームに降りた瞬間から立ち止まってスマホをいじっていました。
本当なら私もエレベーターを使いたかったんですが、満員になってしまうと思って階段へと向かいました。
階段の壁には『痴漢は犯罪です!』とか『歩きスマホはやめましょう!』といった警察のポスターが貼ってありました。そんなポスターを横目に一段、一段…と上っていると、視線のようなものを感じました。
なんとなく分かるじゃないですか、誰かに見られてる時って。
身体中にまとわりつくような、不気味なものを感じました。
振り返ってホームの方を見ると、男子高校生はスマホをいじっているだけ…私を見ているわけじゃありません。
どこから…?誰が…?階段の真ん中で立ち止まり、辺りを見渡しました。
そして、私は気付いたんです…。
階段の壁…ポスターの隙間から、目のような何かが私をじぃ…っと見つめていたのです。
最初は壁の模様とか、汚れか何かかと思いましたが、次第にそれは明瞭になり、眼球まではっきりと見えるようになりました。
悲鳴をあげるより先に、その眼球はギョロリと蠢き、壁から“人間の上半身のような化け物”が這い出てきました。
逃げなきゃ…!
階段を駆け上がろうとした瞬間、その化け物は物凄い速さで私の首を掴み、持ち上げました。
首を絞められる息苦しさと痛み…そして恐怖で、私は獣のような叫び声をあげました。
私の声に気付いたのでしょう。男子高校生の「うわぁ!化け物だ!」という叫び声がホームに響きました。
化け物は「おぉぉぉ…!おぉぉぉ…!」と低い唸り声のようなものを上げ、私を階段に下に放り投げると、壁の中へと戻って行きました。
落ちた衝撃で背中を痛め、身動きの取れなくなった私を、男子高校生は救助してくれました。
あの壁から出てきた化け物が何だったのか、私には分かりません。
この体験を誰かに話しても、みんな信じてくれないんですよ。負った怪我も、ただ転んだだけなんでしょ?って疑うんです。
でも、あの時に感じた手の感触も、絞め上げられる苦しさもすべて本物でした。
壁から得体の知れない何かが這い出て来る不気味さも…
あれ以来、私は地下鉄に乗らないようにしています。
化け物がどこにいるか、分かりませんから…
対応詳細
帝国妖異対策局は某メトロの駅を深夜封鎖し、6名体制で妖異討伐を決行。
午前1時より開始し、始発発車時刻1時間前に討伐が完了。
局員4名が重傷、2名が軽傷を負う激闘でした。
今後は他の駅でも同様の妖異が見られないか調査をする方針です。
懸賞金
現在懸賞金等は懸けられていません。
各駅で被害報告を募るとともに、注意呼び掛けを心掛けています。