tyt-189

以前のリビジョンの文書です


管理番号: TYT-189
妖異通称: 山童
危険レベル: レベル3
遭遇した場合は対象に気付かれないよう最大限の注意を払いつつ退避してください。物品や事象の場合、直ちにその場から離れます。非常に危険な対象です。もし貴方の存在が相手に認識された場合、生命に関わる危機的状況に陥っていると考えるべきです。
対応状況: 調査中。


山童のイラスト(絵本『山童と弥助』より。この絵本は実際の事件をモチーフに作られています。)

● 伯耆国大仙 製炭業者殺害事件
 友清歓真氏が編纂した『幽冥界研究資料』に山童による事件と思われる記述が掲載されています。以下にその要約。  


 大仙の日本海側にある高山の麓に製炭業を営んでいた弥六という男が暮らしていた。製炭用の木の伐採を請け負い、毎日一人で山へ出かけるのが常であった。作業場が山の谷間にあったため、伐採した木材を運搬するのがとても大変な作業負担となっていた。ある日、彼がいつものように独りで木を伐っていると、人とも猿とも見分けのつかない異様な怪物が一匹ひょっこりと彼の前に出てきた。身体は十二~三歳程度の大きさで小さいが、目には異妖な光がああって只者ではないように見えた。体には木の葉か幌屑を綴ったようなものを着けており、異様な酔う容姿をしていたが、なれなれしく男に話しかけてきた。

 怪物の話は要するに、男の仕事の手伝いをするから毎日弁当の飯だけを、半分ずつで良いから食べさしてくれまいかと言うものだった。男はこれを面白がって、怪物にどれだけの仕事ができるかちょっとやって見せろ、見た上で約束すると答えた。その途端、周りから同じような小さな怪物がわらわらと数匹出てきて、綺麗に並んで作業を始めた。積んであった木材は、あれよあれよという前に次から次へと怪物へ投げ渡され、あっという間に二~三十本の木材が谷の上の崖まで運び上げられた。

 男は怪物たちが大変な力仕事をこなしてくれると関心し、先ほどの約束を承諾することにした。そのとき、怪物はもうひとつだけ約束を守ってもらわねばならないということを男に付け加えた。それは、どんなことがあっても自分たちのことを他人に漏らさないということだった。もし漏らしたら、貴様の雁首を引き抜いて胴体を八つ裂きにして骨まで舐ってやるが、それでも良いかと念を押した。男はそれも承知したと答えたので双方の契約が成立することとなった。

 その日以降、男が伐り出す木材はどんなに重量のあるものであっても、怪物たちの手によって軽々と谷から運び出されるようになった。男の伐り出した木材がなくなると、怪物たちは山の合間へと消えていき、伐り出した木材が溜まるとまたどこからか湧き出てくるように現れた。

 お昼時の休憩時、作業を中断して男が弁当を食べようと思って開いてみると、いつの間に取られたのか、いつも飯だけがきっかり半分綺麗になくなっていた。こうした不思議なことや彼らの異様な力強さから、男は怪物たちのことを天狗の一種に違いないと考えていた。

 怪物たちとの契約以降、弁当の飯がきっちり半分もっていかれてしまうので、男は常に腹を空かせた状態になった。その結果として男の女房は弁当の量を増やせと毎日煩い夫に辟易とさせられることとなった。男の稼ぎが良くなったこともあって、最初はそれほど気にすることはなかったものの、女房は段々と男に対して疑念を抱くようになってきた。

 若しかすると山小屋に情婦を囲っていてそのために飯を多く必要としているのだろうと思った女房は、猛烈な嫉妬心に駆られグズグズ男に文句を言うようになり、ついにそれが始末に負えない状態になってしまった。そしてほとほと困り果てた男は、怪物との約束を承知の上で、女房に事情を打ち明けた。

 その話を聞いた女房は、その怪物が自分の父親から聞かされたことのある『山童』かも知れないと言った。そしてそれを見分ける方法も父から聞いていた。それは弁当を詰め込んだ時に、女が一口その飯を取って食べ、跡に飯を補っておき、それを山に下げていく。そしてもし中の弁当が食べられていないようであれば、それが山童であるということだった。

 そして翌日、そのようにした弁当を下げて山に入り、二度と戻ることはなかった。夜になっても男が帰ってこないのを心配した女房は、村人に訴えて翌朝に男の作業場へと尋ねて行った。すると無惨にも男は首が抜かれ、身体は骨と肉と散り散りになって裂き殺されていた。男が持って出た弁当の中身はそのままの状態だったことから、怪物は山童だということがわかった。

 山童たちは、男を引き裂いただけでは怒りが収まらなかったのか、作業場にあった木材を全て地面の上に串刺して立て並べていた。これを見た村人は山童の力にキモを抜かれるばかりであったという。


● 帝国各地の山地にて同種と思われる妖異についての伝承が残されています。

 山童は一般的には鬼の一種であると考えられていますが、山に住むようになった河童の一種であるとする研究者もいるようです。熊本県の一部地域においては、やまんもん、やまんと、やまんわっかし、やまんおじやん等、様々な呼称がされているようです。子供のような低い体躯という共通した特徴がありますが、それ以外は全身が毛に覆われているものや、緑の肌のもの、一つ目のものなど、その容姿は様々であるようです。

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佐脇嵩之『百怪図巻』より「山わらう」(山童)

 いずれにせよ非常に腕力が強く、人間の屈強な男でも太刀打ちすることは非常に難しいとされています。また集団で行動することが多く、また隠れる技術に優れているため、目に見えているのが一匹だとしても、周囲に必ず複数潜んでいると考える方が良いでしょう。

 山童は、相手が女子供だけの場合は見境なく襲ってくることが殆どです。猟師や屈強な人間、あるいは彼らにとって何か理由がある場合には、何等かの交渉を持ちかけてくる場合があります。何等かの約束事が成立する場合がありますが、いずれの場合においても彼らのことを他言しないという約束が付随してきます。約束は彼らにとって非常に神聖かつ重要な意味を持っているため、その約束が果たせるものであれば、成立させても良いかもしれません。もし果たせなかった場合は、二度と彼らと再会すべきではありません。彼らは自分たちの山から出ることは決してないため、山から出てまで約束を反故にした者を追ってくることはありません。

 帝国妖異対策局では山童と遭遇次第、逐次これを撃退するよう務めています。もし山童と遭遇したらり、山童と約束をしてしまったり、また約束を守れなかったような場合には、帝国妖異対策局までご連絡ください。

帝国妖異対策庁より山童の狩猟・捕獲に対して報奨金が支払われます。



CREDIT

© 2019 帝国妖異対策局
License: CC BY 4.0
画像はPixabay(lewie4721)より引用(Pixabay License)。

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  • 最終更新: 2019/06/29 21:36
  • by tytman