TYT-039 ‐ 手目ぇが悪い

管理番号: TYT-039
妖異通称: 手目ぇが悪い
危険レベル: レベル2
遭遇した場合は直ちに退避行動を取ります。物品や事象の場合、近づくことも避けるべきです。 警戒すべき対象です。なるべく早い段階でその場から退避する行動を取るべきです。
対応状況: 都内以外の地域や鉄道でも出現事例が無いか調査中です。


TYT-039

● 都内の通勤列車で「自分の手をボールペンで刺している男性がいる」と通報がありました。
電車を緊急停車し、駅員が駆け付けたところ、叫び声をあげる男性を乗客が取り押さえており、そのまま警察へ引き渡されました。
男性は満員電車内で痴漢行為を働き、その後「右手に“目”が現れた」と供述しています。

同様の事件が過去に3件、同じ電車内で起きています。
いずれも痴漢行為がきっかけとなっており、“右手で女性の体の一部に触れた”、“自分は悪くないという犯人側の開き直り”、“『てめぇが悪いんだよ』という声が頭の中に響く”というところが共通点となっています。

● 都内の通勤電車(7時30分~9時)に被害が集中しています。
同じ満員電車でも、帰宅ラッシュや連休の行楽シーズンでは同様の妖異に関する報告はあがっていません。

● ■■警察署より提出された事情聴取の記録より抜粋

自分のやったことが、許されないことだというのは分かっています。
確かに僕は、目の前にいた女性のお尻を…触りました。初めてです、本当にこれが初めてなんです。信じてください。
あの時の傷…?えぇ、まだ少し痛みます。
でも痛い方が安心できます。あの包帯を巻いてれば、あの“目”を見なくて済みますから。

覚えている限りのことをお話しします。
僕はいつものように通勤列車で職場に向かっていました。満員電車です。
目の前に女性がいて…最初は手が当たっただけだったんです。
「あ…これはマズいな」と思ったんですが、少しずつ、興奮して来てしまって…ずっと触ってしまいました。
するとだんだん、“俺は悪くない…満員電車が悪いんだ、ここに立っている女性が悪いんだ…”と思うようになったんです。
そんなことを考えていたら、右手に違和感を覚えました。なんだか痒くなって…女性のお尻から一瞬手を離して、掌を見てみたら…
ギョロっとした目が、僕を睨み付けていたんです…
そして、頭の中に声が聞こえてきたんです。

『てめぇが悪いんだよ…てめぇが全部悪いんだ…』

低く唸るような声でした。
“目”の視線に、僕は怖くなって…驚いてしまって…。こいつは僕の悪事も自分勝手な心も見透かしていると思ったんです。
恐怖のあまり叫び声をあげ、胸ポケットに入れていたボールペンで目を突き刺しました。“眼球”を、潰すように。
それでも声は頭の中に響いて来るんです。

“てめぇが悪い…てめぇが全部悪いんだ…”

ってね。
どんなに刺しても…刺しても、刺しても刺しても…駄目なんです。
右手の眼球は、刺すたびにぶちゅぶちゅと潰れて血を噴き出していました。その時は痛みを感じませんでしたよ…痛いなんて思っている余裕はありませんでした。
「この“目”を隠さなきゃ…!僕は悪くない!僕は悪くない!ちょっと魔が差しただけなんだ…仕方ないんだ…!」と意味不明な理屈で、“目”を葬ることに躍起になってました。
僕が焦れば焦るほど、低い声は頭の中で笑うんです…『けけけけ…』と蔑むように。
やがて乗客の誰かが…サラリーマンと大学生だったと思います。彼等は僕を押さえ付けて、駅のホームに引き摺り出しました。
それからのことは…駅員さんや乗客の皆さんが証言した通りです。

痴漢行為が妖異の引き金になっていると判断し、鉄道会社は地元警察と連携し痴漢撲滅対策を検討しています。
現場に居合わせた際は、緊急停止ボタンを押して各駅の係員の指示に従って行動して下さい。

また、他の地方や鉄道でも同様の被害がないか調査中です。

現在、帝国妖異対策局から懸賞金はかけられていません。

各鉄道会社では痴漢撲滅と平行して、目撃証言を募っています。
鉄道会社からの懸賞金に関しましては、各鉄道会社のホームペーシまたは駅構内のアナウンス、管轄する警察署にお問い合わせください。


CREDIT

© 2019 浅倉喜織
License: CC BY 4.0
画像はpixabayより引用(Pixabay License)。

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  • tyt-039.txt
  • 最終更新: 2019/06/23 10:41
  • by tytman