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  • 怖い話「冷蔵庫」

    川崎国雄は、妻のことを憎んでいた。結婚して20年になるが、彼は口煩い妻にずっとウンザリしていた。毎日のように聞かされる妻の罵詈雑言にすっかり気が滅入ってしまっていた。自分を奴隷のようにこき使う妻に心底ウンザリとしていた。国雄は妻を一息に葬ってしまいたいと考えるようになった。

    彼は完璧な計画を立てた。
    夕方になって妻が家へ帰ってくると、彼女は冷蔵庫を開いて中身に目をやりながら、国雄に夕食を作るように言った。しかし国雄は夕食を作らず、代わりに妻をちょっと驚かせた。国雄は、妻がちょっとしたサプライズが好きなのを知っていた。

    「実は、もう夕食を作って外のガレージに用意してあるんだ」

    釣りが趣味の国雄は、ガレージに大きな業務用の冷蔵庫を置いており、釣ってきた魚をそこで冷凍していた。広いガレージで、時折バーベキューをすることもあった。

    彼女は一旦、家を出て暗くなっているガレージに向かった。国雄は、台所から肉切り包丁を取って、彼女の後に続いた。

    数分後、彼は額から汗をぬぐった。

    彼は、女性の体を解体するのが、これほど重労働だったとは思っていなかった。その場には全部で6つの肉片があった。頭、両腕、両足、そして胴体だった。彼は注意深く、肉片をラップで包み、ロープできつく縛った。

    作業を終えると、彼の足もとには6つの綺麗な包みが出来ていた。国雄はそれらを拾い上げて、業務用冷蔵庫に放り入れていった。それから扉を閉め鍵を掛けた。床をモップで丁寧に掃除し、家に戻り、台所で包丁を洗ってから元の場所に戻した。

    ソファーに腰を掛けると、国雄はそこで初めて安堵感を得た。彼は自由になった。誰かに妻のことを尋ねられても、男を作って逃げたといえば、誰も疑ったりしないだろう。誰も冷蔵庫に彼女がいるなって思いも寄らないと思った。

    彼はうたたねを始めた。今や、我が家は平和で静かだった。とても静かだ……

    ドンドンと跳ねる音以外は!

    国雄は飛び起きて、耳を傾けた。何かがドンドンと跳ねている音が、ガレージの方から聞こえてきた。その音はだんだんこちらへ近づいてきているように思えた。

    突然、国雄は目覚めた。彼は今のが夢であることを知った。しかし、あまりにもリアルな夢だった。彼の心臓は大きく早鐘を打ち、汗が顔中から落ちてきた。彼は台所から肉切り包丁を取り出した。そして冷蔵庫を確認するためにガレージに向かった。

    冷蔵庫の鍵はしっかりと掛けられていた。彼が家に戻ろうとすると、床に何かがあることに気が付いた。背中に冷たいものが走った。それは血にまみれたラップだった。

    国雄は冷蔵庫の鍵を開けて中を見た。そして彼は恐怖に凍り付いた。中身は空っぽだった。6つの包みは全部なくなっていた。

    正気が失われそうな中、彼は立ち尽くしていた。その時、司会の端に、彼は何か動くものを見たような気がした。ひとつの影が、床から彼の後に回り込んだ。彼は急いで振り返ったが、そこには何もなかった。

    そのとき、カチッと音がしてガレージの明かりが消えた。彼は暗闇の中に投げ出された。耳障りな音が聞こえて来た。その音は四方から近づいてきて、彼を取り囲んだ。

    彼は肉切り包丁を暗闇に向かって、やたら滅法に振り回した。闇の中では何も見ることができなかった。彼の耳には、ただ床に落ちていたラップが床をズレ動いているような音しか入ってこなかった。

    突然、彼の両足の間を何かが滑りぬけていった。彼は冷たい指が、自分の首に食い込んでくるのを感じた。彼は必至に叫び声を上げようとしたが、声は出てこなかった。何かが肉切り包丁を彼の手からうばいとった。彼は首に食い込んだ指が、ますます力強く締め上げてくるのを、意識が失われるまで感じていた。

    警察がガレージを調べたのは、事件発生から一週間後のことだった。彼らがガレージの業務用冷蔵庫をあけると、そこには生命が失われた川崎国雄の体があった。その体はバラバラになった彼の妻のパーツに取り囲まれていた。