怖い話 「壁の文字」


私が若かった頃に住んでいた街に、古い廃ビルがあった。怖い噂が色々とあって、地元の子供たちは誰も近づかなかった。

そのビルのコンクリートの壁は、ヒビが入り、ところどころ崩れていたりした。窓は全て割られており、中の床にガラス片が散らばっていた。

ある夕べのこと、肝試しに、親友とこの恐ろしい廃ビルを探検してみようということになった。

私達は、ビルの裏手から窓を超えて中に入り込んだ。廃ビルの中はどこもかしこも汚れており、床は泥のようなもので覆われていた。

私達は、体にこびりついたホコリを払って、辺りを見回した。私達は、支柱の近くの壁に文字が描かれているのを見て驚いた。

”僕は死んだ”

そう書かれていたのだった。

「たぶん、俺達みたいに誰かが入り込んでイタズラしたんだよ」と私は言った。

「だな。……おそらく……」少し怯えた声で友人が答えた。

私達は、1階の他の部屋も探検してみた。元はキッチンとして使われていたらしき部屋で、私達はまた壁に掛かれた文字を見つけた。

”僕は二階の部屋にいる”と読めた。

私達は、ひびが入った階段を昇って二階に向かった。私が先頭を進み、友人が私の後をピッタリとくっついてきた。

私は怖くなかったが、友人は少し怯え始めていた。

二階につくと、左側にある狭い廊下を慎重に進み始めた。廊下の突当りに、閉じられたドアがあり、その脇の壁には、
不吉な文字が書かれていた。

”君たちは僕をこの部屋で見つけるだろう”

それを見た友人は、恐ろしさのあまり震えだした。私は静かに後ずさりした。不吉な文字を見るのがいやで、目を背けた。

友人は、もうこれ以上進むのは止めようと言ったが、私は何もないから大丈夫だよと友人をなだめた。

私はドアノブを回した。ギーっと音を立てて扉が開いた。私達が中に足を踏み入れると、中が空っぽだということに気が付いた。

そこには2つの閉じられたドアが両サイドにあり、壁にはまた文字が書かれていた。

”僕の頭は左の部屋、僕の体は右の部屋”

友人はその文字を見て正気をなくしてしまった。ギャーと喚くと、取っ手を返して逃げ出そうとした。

私は友人の手を掴んだが、友人は私の腕を振り払うと、扉を開いて逃げて行った。

友人の足音が階段を下り、遠ざかっていくのが聞こえた。

私は足を踏ん張って、勇気を奮い起こして、自分の中の恐怖と戦った。意を決して、私は右に進んで扉を開き、中へと入った。

そこには小さな文字が描かれていた。

”僕の体…この辺の下”

私は床に目を落とした。私が立っている足元にも文字が書かれており、思わず私は飛びのいた。文字には……、

”私の首が向こうから、お前の後に来ている。振り返ってみろ”

私の背中越しから、扉が開く音が聞こえた。私は素早く振り返ると、向こうの扉から影のようなものが動いているのが見えた。

突然、何かが私のいる部屋に転がり込んで、そのまま壁際で止まった。

それは切断された友人の首だった。

首は、焦点を合わせないままに私の方を見ていた。私は恐怖のあまり絶叫し、震えながら窓を乗り越え、二階から地面に飛び降りた。

着地に失敗し、腕の骨を折ってしまったが、恐怖のあまり痛みを気にする間もなく、家に走り帰り、泣きながら両親にこの出来事を話した。

警察が呼ばれ、例の廃ビルを調査した。最初、警察は友人を見つけることはできなかった。

壁に書かれた文字もなかった。

警察は廃ビルの上から下まで徹底的に捜査したが、友人を見つけることはできなかった。

結局、二階に横たわっている友人の体だけが残された。

今も彼の首は発見されていない。

 

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