ゆっくり朗読 「帝国妖異譚06 神隠し」 柳野町男





六 帝国の北陸地方に狩倭村と呼ばれる村落あり。古くから神隠しの多きことで知られており、ほとんどの村人は海を恐れ近づくもの少なし。
村に残されている言い伝えによれば、海の神が生贄を求めて常に海岸を見張っており、人がひとりで海辺にいるところを見計らって連れ去るものと、
信じられているということなり。実際に毎年の幾人かは海で神隠しに遭っており、そのうち遺体となって戻ってくる者もあるという。

かつて隣県より剣に覚えのある豪の者が、海の神の伝説を聞きつけて来たり。
邪なる神なれば、これに一太刀浴びせんと海岸に数日滞在したことありしが、ついに何ものとも出会うことなく帰りしことあり。
ただ帰り際に、何度か海の方から視線を感じたことを伝え、あまり海辺には近づかぬ方が良いと村人に伝えたと言うことなり。

また村人の噂話として、狩倭村周辺の山々に住まうイタカなる民が、海辺でさらった人々を海の神に生贄として捧げているのではないかというものあり。
しかし民俗学研究者によれば、イタカやサンカと呼ばれる人々は海を忌む傾向があり、そのようなことはないだろうということである。

帝国妖異対策局からも何度か局員を派遣して調査を行っているが、現在のところ神隠しの謎について、何も手掛かりを得られてはいないということなり。


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