異類婚姻譚

異類婚姻譚

ひ、とひきつる喉を抑えつけた。ともすればほとばしりそうになる悲鳴に、強く自分の口に手を当てる。先ほど見たあれは幻覚だったんじゃないか、なんて一縷の望みを抱きながら、息を殺して、物陰からひっそりと顔を出した。

──シャン、シャン

顔を出したとほぼ同時にまたなり始めた鈴の音に、びくりと頭をひっこめた。どうせまた、なにかが通るのだろう。私には認識できない黒い靄と、顔を下げて白無垢を着た女。人だか人じゃないかもわからないようなあれらが、嫁入りでもするかのように列をなして歩いていくのだ。

サリ、と何かを摺るような軽い足音が近くで聞こえて身を縮こまらせた。意識すればするほど気配が近づいてくる、そんな感じがする。こわい、こわい、未知のものに対する恐怖で脳内が埋め尽くされた。

人ならざるものだからこんなにも怖いのか、それとも、自分に危害が及ぶ可能性が高いから怖いのか。恐怖の正体なんて定かではないが、ひとつわかるのは、さっきからがちがちとうるさく歯の根が止まらないということだけだ。

ひときわ近く、耳の傍で音が鳴った。ふぅと流れた生暖かい息に、ふっと意識が途切れるような気がした。あぁ、私はここで死ぬのだろうか。

「…あら、女の人が倒れてる。どうしたのかしら?」

「ふふ、そうね。うーん、怖がらせるつもりはなかったのだけれど。あなたの姿が怖いからしら」

「冗談よ、冗談。愛しい旦那様」

「ええ、それはいい考えだわ。優しいのね」

薄れゆく意識の中で話し声が聞こえた。優しく笑う声を耳にしたのを最後に、私の意識はぷっつりと途切れる。


【号外】

16 8年

青 村で何か  現!?本当に出たのか、それ    気狂 か!

昨夜未明、若い が村はずれの小屋で倒れているのが発見された。女を発見し起こした村人に対して女は  たくないと懇願し、        という

話を詳しく聞いた役人の話によると、昨夜の2時ごろ、女は黒い と人間の女の嫁入り  に遭遇した、  れそうになったといった旨を話して り、錯乱状態ともとれる。

また、本当に女 異  姻譚に遭遇したのであ ば危険 未 数であるため、本雑 は女及びその 辺に対 る聞き込みを  するつもりである。

異類婚姻 の解明は急がなければならない。

(血痕とみられるなにかで汚れていてよく読めない)


CREDIT

© 2019 卵とじ
License: CC BY 4.0

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  • 異類婚姻譚.txt
  • 最終更新: 2019/06/04 21:58
  • by hachistudio